異説?泣いた赤鬼

以前、カズ山から「『泣いた赤鬼』ってどんな話だった?」と聞かれ、私は遥か幼い昔に読んだ絵本の内容を思い出し、そのあらすじを答えたところ、どうやらそれは世間一般に流通している「泣いた赤鬼」とは大幅に違うという事実を、ウン十年を経た今初めて知った。それまでは、自分の知っている絵本のお話こそが、ポピュラーな「泣いた赤鬼」のストーリーだと何の疑いもなく信じ込んでいたのだった。
その事については、カズ山氏のサイトの日記 (2006/04/19のログ) に記されている。
衝撃の事実に驚きはしたものの、「同じタイトルでも色んなバージョンが存在するのかな?」とか(手塚漫画かい)、「同名別話が存在するんだろか?」ぐらいにしか思っていなかったのだが、カズ山の日記を読んだ人々から「rikansの勘違い」「捏造ネタ」を疑われているらしい事を後日になって知り、さらにショックを受けた。
確かに、幼い子供は“そうなってほしい”という自分の願望と現実をごっちゃにして、それを事実だと認識・記憶してしまう事がある、という話をよく聞く。
だが、ここで断じて主張したい。私の知っている「泣いた赤鬼」は、決して願望と現実をごっちゃにしたものでも、夢を見ていたわけでも、勘違いでも捏造でもないと。素朴な挿絵の雰囲気まで覚えている。
しかしそれを証明したくても、今となっては何ひとつ証拠がつかめない。ネットで検索しても、ヒットするのは世間一般に知られている方の「泣いた赤鬼」に関する情報ばかり。作者名を覚えていれば…と思うのだが (大幅に内容が違うのであれば、濱田広介氏ではなくて別の作者かも?) なにぶん当時は幼稚園児ゆえ、絵本の作者が誰かまでは意識していなかった。タイトルを勘違いしている可能性も考え、「あかおにのなみだ」等々、キーワードを色々変えて調べてもみたのだが、やはり何の手がかりも得られない。
せめて、現物の絵本さえ手元に保管していれば・・・!
まさかウン十年後に、その絵本の事で悩むことになろうとは、
当時は露ほども予想していなかった。そりゃそうだ。

ちなみに、私が記憶している「泣いた赤鬼」のストーリーは以下の通りである。記憶が曖昧な部分は極力省き、比較的明確に覚えている個所だけを抜き出して(一字一句覚えているわけではないから、自分の言葉に書き換えてはいるが)まとめてみた。
通っていた幼稚園で毎月配られていた、「ひかりのくに」という出版社の絵本のうちの1冊だった。

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昔々、とある村はずれの粗末な一軒家に、1匹の赤鬼がひっそり住んでいた。
村人は皆、鬼を恐れてこの小屋に寄りつかなかったが、
赤鬼は内気でおとなしく、心優しい鬼だった。
道端で突然雨に降られて困っていた村人に「これ持っていきな」と傘を貸してあげた事もあった。「鬼は恐ろしいもの」と思い込んでいたその村人は、思いも寄らぬ赤鬼の親切に驚いたという。

ある時、赤鬼の故郷である?地獄から、赤鬼より偉い立場と思われる?青鬼が、閻魔大王の使いで赤鬼の元にやってきた。(小柄で優しげな顔の赤鬼に比べ、その青鬼は、体が大きく恐ろしい形相をした「鬼」らしい外見の鬼だった。)
青鬼曰く「鬼のくせに人間と仲良くするとはけしからん。次の満月の夜までに人間を1人食うこと。さもなければお前は死ぬ。…との、閻魔様の仰せである」
そう告げて、青鬼は帰って行った。さあ困った赤鬼…。

それから程なくして、赤鬼の家に、年老いた旅人が1人訪ねてきた。
赤鬼の姿に老人はぎょっとしたが、赤鬼が意外に優しい目をしていたため、老人は安心して
「旅の途中で足を悪くしてしまい、困っています。癒えるまでの間、しばらく泊めて下さらんか?」と頼んだ。(※このへん多少、記憶違いがあるかもしれません)
赤鬼は承知した。
内心「人間を食べたくはないが、自分が死ぬのはまっぴらだ。この年寄りを油断させて、食うことにしよう」と考えたのだった。
数日たち、老人と赤鬼は打ち解けていった。赤鬼は孫のように老人に尽くし、老人の足も日に日に癒えていった。
そうこうしているうちにも、満月の夜は迫ってくる。
最初のうちは「なあに、まだ間はある。じいさんを食うチャンスはいくらでもある」とタカをくくっていた赤鬼だったが、(当然ながら) 老人を食べることがなかなか出来ない。
赤鬼は夜な夜な、日ごとに丸くなってゆく月に、泣きながらすがるようになる。
「お月さま、私はあの優しいおじいさんを食べることなど出来ません。でも死ぬのは怖いです。助けて下さい…」そして人間を食べることが出来ないまま、赤鬼は次第に弱ってゆき、臥せってしまう。懸命に赤鬼を看病する老人。
ついに、満月の夜はやってきた。瀕死の赤鬼は、月に向かって言った。
「お月さま、私をあなたの所へ連れて行って下さい。死ぬのはもう怖くありません。おじいさんを食べずに済んで良かったと思っています…」静かにこときれる赤鬼。老人は号泣した。

明くる朝、老人は赤鬼を弔うために、泣く泣くお墓を堀りに行った。
そして小屋に戻ってみると…
なぜか消えていた赤鬼の亡き骸の代わりに、1人の見知らぬ若者が微笑んでいた。
きょとんとする老人。「…はて、どなたじゃな?」
「おじいさん、私はあの赤鬼です。お月さまが、私を人間として蘇らせてくれたのです」


その日の午後、1人の若者が、老人を背負って人里へおりてゆく姿があった。
二人はとても幸せそうだった。

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以上、大体そういう内容だったと記憶している。
(4歳児心に「ええ話やなあ」と感動したから覚えている)
偶然ながら、お月見の時期にふさわしい話だなあとも思う。

しかし、晴れて人間の姿になったからこそ人里へおりていったのか…
異形の姿のままでは、いくら心優しくても人々に受け入れてもらえないから?
いやそんなことはない・・・と思いたい。
きっとこの赤鬼は、内気で優しいゆえに、人里に出て傷つくのが怖かったのだ。
…と、自分を納得させたところで。

このバージョンの「泣いた赤鬼」について、心当たりのある方へ。
どうか人助けと思し召して(TT) 情報を頂けるとありがたいです;
何卒よろしくお願い致します。

だって・・・・誰も信じてくれないんだもん;;
(大体私は、こんな話を捏造出来るほど創造力豊かじゃないすよ・爆)

この記事へのコメント

rikans (自己補足)
2006年10月11日 11:38
超余談。
この話をした時、カズ山に「アニメの話みたい」とバカにされたが (お話のせいではなく、私のあらすじ説明がまずかったのかもしれない。だとしても、アニメの話みたいやったらあかんのかー!?) この話の赤鬼もしくはおじいさん役を、可愛いアニメ美少女に置き換えたら萌えるかもしれん…と一瞬妄想してしまった私は汚れたおとな (てか大きいおともだち) になってしまったと思う。
orz
それはさておき。

やっぱり時代が古すぎる上 (本文中では“ウン十年”とボカしてありますが、約30年ほど前の絵本です)マイナーな作品?なので、もう情報が残ってないのかな・・・;
あき
2009年05月25日 01:09
逆輸入版の赤鬼じゃないでしょうか。
どう見ても聖書のインスパイアが香って仕方ありません。
旅人のおじいちゃんを介抱して泊めるさわりは、良きサマリヤ人の施し、ですよね。
丸くなるお月様への祈りは、イエス様のゲッセマネの祈りでしょう。お月様【お父様】だけが友達だった赤鬼、かわいそう。
お墓に行くおじいちゃん、もう、バレバレでしょう、マグダラのマリヤとみなさん。そして生き返った赤鬼、いや、イエス様。ラザロもヨハネもペテロも私も大喜びです。
ルカ24/46「次のように書いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死者の中からよにがえり、その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々にのべつ耐えられる。
rikans
2009年05月25日 14:01
>あき様
数年前のログにも関わらず、
ヒントになりそうな興味深いコメントをありがとうございました。
絵本そのものの出版情報については今も得られないままですが、
逆輸入版の赤鬼なるものが存在するのでしょうか…
私は聖書には詳しくなく、通っていた幼稚園もキリスト教系ではなかったのですが、あのお話と聖書との共通点がこれほどまでにあったとは知りませんでした。作者や創作意図について、ますます知りたくなりました。(有名な浜田廣介作「泣いた赤鬼」とは全く違う内容ゆえ、別の作者による作品と推測しています)
通りすがり
2009年12月28日 18:17
私もポピュラーな泣いた赤鬼に違和感を覚えていました。
それで検索しておりましたら、こちらにたどり着いたのですが
実家に問い合わせたところ保管されていたので、お知らせ致します。

タイトル おにのねがい
作・絵 若菜 珪
おはなしチャイルド91号

話の内容からして、上記作品で間違いないと思われます。
それでは、良いお年を
rikans
2010年01月13日 13:33
>親切な通りすがりの方
貴重な情報をありがとうございました!
年末からずっと留守にしてましたので、お返事が遅れてすみませんでした。
教えて頂いたタイトルと作者名で検索したところ、私の記憶にある、ひかりのくに出版絵本(私の幼稚園時代に配られたので、発行は恐らく1970年代以前)の情報には辿り着けませんでしたが、1982年発行のおはなしチャイルドの絵本情報に辿り着き、ご指摘の通り、話の内容からこの作品にほぼ間違いないと確信しました。
私がタイトルを勘違いして覚えていたのか、それとも元々「ないたあかおに」というタイトルだったのが、ひろすけ童話のタイトルと被るのは紛らわしい(或は著作権的にまずい?)ということで後になって変えられたのか…?(若菜 珪という作者さんは、ひろすけ童話「泣いた赤鬼」の挿絵も描かれてますね。検索で知りました)
その辺りの曖昧さがどうにも歯がゆくて気になるのですが、お陰さまでだいぶすっきりしました。
お書き込み下さり、感謝致します。
新井素子と同い年のオッサン
2011年08月02日 21:34
「異説?泣いた赤鬼」のストーリーを見て、
どこかで似たような話があったなと思いました。
新井素子の「ラビリンス」です。
登場人物は鬼と年老いた旅人でなく、半牛半人の怪物と生け贄の少女です。
rikans
2011年08月03日 11:25
>新井素子と同い年のオッサン様
数年前のログにも関わらず
コメントを下さり、
ありがとうございました。
新井素子さんの「ラビリンス」は
未読ですが、
他にも似たお話が存在するのですね。

絵本の現物を保管しておかなかった事は今でも後悔しています。
ミホ
2016年03月22日 20:55
はじめまして。とっても懐かしいその本は恐らく
おはなしチャイルド第91号「おにのねがい」(作絵若菜珪)でしょうか。

恥ずかしながら私もずっとタイトルが「泣いた赤鬼」と思っていました。実家を家捜ししまして、原本を見つけましたので間違いないと思います。いとこのお下がりで私が生まれる前の本ですが、この本は宝物で今だに大事に残してありました。

福音館書店から出たと思っていましたら、株式会社チャイルド本社、昭和57年10月1日発行の本でした。

こんな所で疑問にお応え出来たのではないでしょうか?

rikans@管理
2016年03月24日 23:01
>ミホ様
初めまして!
およそ10年以上前の記事を拾い上げて下さり、
発行日の情報まで詳しくお寄せいただき、
ありがとうございます!
2009/12/28 18:17の通りすがり様からもコメント頂いてますが、「おにのねがい」(作絵若菜珪)で間違いありません…!検索で辿り着いたこちらのブログさんで画像も拝見し、確信しました。まさにこの絵本でした!!
http://happy.ap.teacup.com/ope-iso/66.html

それにしても?なぜタイトルを「泣いた赤鬼」だと思い込んでしまっていたのか謎です…(^^;
恐らく自力では永遠に正解に辿り着けず、
今もモヤモヤしていたかもしれません(笑
おかげさまでスッキリです。
本当にありがとうございました!

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