「パンズ・ラビリンス」観賞 (ネタバレなし)

先週日曜、恵比寿ガーデンシネマで「パンズ・ラビリンス」を観ました。
(手塚作品に似てる?説にもちょこっと言及)

舞台は1944年、
ファシスト対ゲリラ軍の戦いが続くスペインの、とある山奥の駐屯地。
優しかった実父を亡くし、冷酷無比な軍人の義父の元に連れてこられた
お伽噺の好きな12歳の少女が、妖精に導かれて幻想世界の迷宮に迷い込む。
そこで出会った牧神(パン)に「あなたこそ、地下の魔法の国の王女様。
はるか昔、王女は人間界に憧れて地上に出たために、全ての記憶を失った。
嘘や苦痛のない魔法の国へ再び戻るには、3つの試練をクリアせねばならない」
と告げられる。
戦が続く中、愛情のない義父の元で怯えながら暮らす現実と、幻想の迷宮。
少女は二つの世界から与えられる試練と向き合う事を、余儀なくされる。
逃げ場はどこにもない。

当ログでのネタバレ発言は控えますが…
辛くてやりきれない映画です。涙なしには見れないです。
といっても、ありがちで安っぽいお涙ちょうだい映画ではありません。

本編中、義父がジャズを聴きながら髭を剃ったり、父の形見の懐中時計を大切に
している描写が何度となく出てきます。それについて、パンフレットには
「ロマンチックな一面」「どこか憎めない」などとコメントされている行がある
のですが、私には…そんな行動ひとつ取っても、他者への情の欠片もないくせに
自己愛だけは異様に強い、猟奇的な怪物にしか見えませんでした。
戦争が、そんな怪物を産むのでしょうか。
人の命を何とも思わない残虐非道なふるまいや、
露骨に女性を軽視する態度を彼が見せるたび
(身重の妻の体より、お腹の子=自分の跡継ぎの方が大事らしい。)
「こんなクズ野郎、死ねばいいのに!」と怒りながら映画観賞…。
でもそんな奴に限ってしぶといのね。まさに最強の「怪物」でした。

パンフレットによると、この映画を撮ったギレルモ・デル・トロ監督は
日本の漫画やアニメが大好きだそうで、本作にもその影響が見られる事に
触れられています。特に、監督本人曰く、自分の少年期を形成したといっても
過言でないほど強い影響を受けたアニメ作品は
「リボンの騎士」と「未来少年コナン」なのだとか。
ここで「リボンの騎士」との接点に出会えるとは思いませんでした。
何だか嬉しいなあ(^^)
サファイアも一国の王女様でありながら、これでもかというほどの試練に
見舞われ、闘わねばならなかったヒロインでした。
だからというわけではないけれど、
本作との多くの類似点や相違点を比較されていたジブリアニメよりも、
むしろ手塚作品との類似性を随所に感じるのは
自分が (曲がりなりにも…;) 手塚ファンの端くれだから?
ナナフシが妖精に姿を変えるメタモルフォーゼなシーンや、
不気味でありながら、どこかユーモラスな妖精・怪物ら異形の者達の
造形と動きに至っては、まさに…という感じ。
そして、戦争の影が落とす、どうしようもない暗さ。醜さ。悲しみ。
思わず目を覆ってしまうグロテスクなシーンも登場しつつ、
少女が迷い込む幻想世界のビジュアルの妖艶な美しさも
筆舌に尽くしがたい魅力で迫ってきます。

小学生以下の子に見せるにはキツかろう…;と思われる場面がありますし
(PG-12指定)、お伽話チックなファンタジーかと思いきや
辛くてショッキングな現実を突き付けられる内容の作品ではありますが、
1人でも多くの人に観てほしい、今年一番のオススメ映画です。

この記事へのコメント

rikans
2007年12月19日 11:58
補足。
本編中、何度も流れる主題曲も印象的でした。
映画の余韻を静かに残す、
やるせなく物悲しい、胸がしめつけられるような旋律。
とても美しい曲ですが、こんな子守歌じゃ
悲しすぎて眠れないよ…(泣)

ちなみにカズ山氏は、この日が本作2度目の鑑賞。初見の私が気付かなかった「なるほどー!」な点を挙げ、「ストーリー展開を追う事に追われて観ていた1度目より、色々と細かい所を観れた2度目の方が良かった」と話してました。
そう言われると、もう一度観たくなるような…(また辛い思いを味わうことになるけども!?)
kimion20002000
2007年12月24日 11:25
TBありがとう。
僕はパンフは買ってないんですが、手塚作品が好きだったというのは、興味深いですね。
本格的に、だれかが、手塚作品とパンズラビリンスの比較をやってくれるといいんですけどね。
rikans
2007年12月24日 15:51
kimion20002000さん、初めまして。
こちらこそ、TBとコメントをありがとうございました。
kimion20002000さんなりの解釈の数々、興味深く拝見しました。
レビューに書かれていた通り、所々に記号や暗喩を感じさせる映画で (閉塞的な空間の妖しさが印象的でした)、観る回数を重ねれば重ねるほど、見えてくるものがありそうです。
それと、同行した連れに「この映画は冒頭シーンでいきなり、ネタバレを暗示する映像を観客に見せている」と初見後に教えられ、なんて大胆な作りの映画だろう…!とも思いました。
パンフにも類似作品として紹介されていた (気に入った映画のパンフは大抵買っています) 映画「ミツバチのささやき」については未見なので、こちらもいつかぜひ観てみたいです。

> 本格的に、だれかが、手塚作品とパンズラビリンスの比較を~
同感です。自分にもう少し、両作品に対する知識と洞察力と文章力があれば…と思うのですが。

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